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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)34号 判決 1975年2月27日

原告

メルク・エンド・カンパニー・インコーポレーテッド

右代表者

イルビング・エヌ・スタイン

右訴訟代理人弁護士

藤本博光

外二名

被告

特許庁長官

斎藤英雄

右指定代理人

戸引正雄

外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を九〇日とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

原告は「特許庁が、昭和四八年九月一〇日、同庁昭和四五年審判第九六三三号事件についてした審決は、取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、主文第一、二項同旨の判決を求めた。

第二  請求の原因

一、特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四三年一二月一〇日特許庁に対し、別紙目録記載の商標(以下「本願商標」という。)について、商品区分第一類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品とし、登録第五三六七二八号商標「DECADRON」(昭和三三年商標出願公告第一九〇一七号)外八件に連合するものとして登録出願したところ、昭和四五年七月二五日拒絶査定を受けたので、同年一一月九日審判を請求した。これに対し、昭和四八年九月一〇日「本件審判の請求は成り立たない」との審決がなされ、その謄本は昭和四八年一一月七日原告に送達された。なお、三ケ月の出訴期間が附加されている。

二、本件審決の理由の要旨

本願商標と原査定において本願拒絶の理由に引用した登録第七五〇六九八号商標「DUO」(昭和四二年商標出願公告第五〇七一号、以下「引用商標」という。)との類否について比軽検討すると、本願商標からは、その構成文字に相応して「デュオデカドロン」の称呼を生ずる場合があるとしても、その構成がハイフンで結合されているので、「DUO」と「DECADRON」の二語が結合されたものであることは一見して明白であり、かつ、全体として特定の観念を有するものではないから、必ずしもこれを一体不可分のものとして把握しなければならない特別の理由がなく、簡易迅速を旨とする商取引においては、そのいずれかをとらえて、「デュオ」もしくは「デカドロン」の称呼をもつて取引される場合が決して少なくないものと判断するのが相当であり、従つて、本願商標は「デュオ」の称呼をも生ずるものといわざるをえない。

してみれば、本願商標と引用商標とは、「デュオ」の称呼を共通にするものであるから、外観、観念の点について論及するまでもなく、両商標は称呼において互に類似する商標であつて、かつ、その指定商品も同一であることは明らかであるから、結局、本願商標は商標法第四条第一項第一一号の規定に該当するものとして、その登録を拒絶すべきものである。<以下略>

理由

一請求の原因第一、二項の事実は、当事者間に争いがない。

二ところで、原告は、医薬品業界等においては「DUO」という語は「二つ」又は「二種類」を表わす接頭語として慣用されており、「DUO」と他の語とを結合させて使用する場合には、この部分に商標としての顕著性は少なく、本件審決のいうように商取引において特に「DUO」のみを切り離して「デュオ」なる称呼が独立して生ずることはありえないから、この点に関する本件審決の判断は誤つている旨主張する。

しかしながら、商標は、指定商品の出所を識別するための標識として、その商品について使用するものであるから、本願商標のごとく、ハイフンで二語の外国語が結合され、しかも全体として特定の観念を有しないものである場合には、「DUO」という語がたとえ医薬品業界等において「二つ」又は「二種類」を表わす接頭語として慣用され、またこれを採択し、使用する者の意図がその慣行に従うものであるとしても、以上のことについての知識がない一般の需要者としては、簡易迅速を旨とする商取引にあたつて、その商標全体の構成上、商品の出所を識別するのにもつとも親しみ易く、しかも読み易い部分から自然に生ずる称呼をもつて、自己の欲する商品を指定し、取引する場合が少くないと考えられる。したがつて、本願商標からは「デュオ」の称呼をも生ずると解するのが相当である。それ故、原告の上記主張は理由がないといわなければならない。

なお、<書証>によれば、「DUO-MEDIHALER」という商標が「MEDIHALER」その他の商標に連合するものとして登録されていることが窺われるが、これらの存在は前記判断を左右するに足りない。

三以上のとおり、本件審決には、原告主張のごとき違法はないから、その取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却することとし、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第一五八条第二項に則り、主文のとおり判決する。

(古関敏正 杉本良吉 宇野栄一郎)

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